アスペルガーから見たコロチキナダルの心理とは?

【 お断り 】
  • 「著名人は自らを商品として売り出している」という考えから芸名及び名前名称は商品名として捉えて敬称略としています。一個人として直接対話する場合はその限りではありません。
  • 本エントリーは個人ブログにて個人の推察を元にしたもので、特定の個人や団体の評価を貶めることを目的としたものではありません。万が一そう捉えられる記述があれば気づき次第修正、撤回致します。
  • 筆者は当事者ということもあり個人的に書籍を読んだりしていますが、専門的に系統立てて勉強したわけではありません。精神科医でも医者でもないので思い込みや勘違いや間違いがないとは限りません。
  • アスペルガー症候群は自閉症スペクトラムの一種であるという考え方が主流になってきていますが、そうすると広範囲かつ複合的に他の発達障害を含める意味にもなりますので前者を用いています。
  • 筆者はアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)の疑いが濃厚ですので、一般の方とは論理の構成が異なる場合があります。


2016/12/24 追記
以下は1万400字ほどある長文です。お時間のある時にどうぞ。
以下のエントリー本文をブログの「追記」に格納。
追記終わり

2016年11月3日に放送された『雨上がり決死隊のトーク番組アメトーーク! コロチキ・ナダルSP ひんしゅく体験!ナダル・アンビリバボー2』を観た。番組の趣旨は、コロコロチキチキペッパーズのナダルがひんしゅくを買うような変わった失敗ばかりするというエピソードを集めたもの。
以前に一度同じ趣旨の番組が作られており、それでも似たようなことを繰り返すナダルが再度呼ばれたのだった。


■ナダルの白いニットのタートルネック姿

アスペルガーは服装に無頓着と思われることが多い。だが、アスペルガーに言わせればこれは少し違う。こだわりが強すぎてTPOにあった服装ができないのだ。

また、アスペルガーの中にも視覚優位、聴覚優位、過敏な皮膚感覚などそれぞれのこだわりがあり、見た目のおしゃれさよりも身につけた時の肌感覚を優先させるタイプもいる。

視覚優位は文字通り視覚で考える人。考え事も脳内に映像化したりして、絵や画像、写真や立体感のあるイラストも大好き。
聴覚優位は耳が…ということではなく、言語性ということ。言葉や理屈で考えるタイプ。画像がほとんどなく文字で埋め尽くされたこのブログを見てわかる通り、おれはこっち。

おれの場合は肌感覚を最優先として、出かける時には見栄えのいい少数の服を着回すタイプ。室内ではどの服が、というより「脱がずに着続ける」という感覚が大事で、できる限り同じ服で過ごす。寝る時も可能な限り起床時と同じ服を着続けている。

少数を着回すタイプだと、出かける服が足りなくなることがある。状況さえ許せばその服を脱ぎたくない。ずっと同じものを着続けていたい。でもそういうわけにもいかない。じゃああとは何着てもいいや、どうせお気に入りじゃないんだから。目についたもの何でも着てしまえ、と投げやりになってしまうこともある。
その結果、めちゃくちゃなコーディネートになって、ファッションには気を使わない人になってしまう場合もある。
極端な場合には同じ服を何着も揃えてそればかり着回す、ということもある。

視覚優位の人だと独特の色彩感覚などを持っていて、それがうまく定型発達(普通の人)に受け入れられた場合は「おしゃれな人だね」ということになる。

でも視覚優位の中にも色優位性と線優位性があり、前者は色が好き。後者は文字や輪郭線が好き。
色優位性は濃淡を意識したカラフルなファッションになり、線優位性は形や柄などのデザイン性に優れたものを喜ぶはずだ。

ややこしいのが、線優位性は細かな色の違いがわからないので、かえってけばけばしい派手な色を好む場合がある。おれは明らかにこれで、聴覚優位の線優位性。ハッキリクッキリした赤やショッキングピンクが好きだ。

グチグチと理屈っぽく、色にこだわらないモノトーンの服を着て、坊主頭にタートルネックという独特のデザインを好むナダル。
そんな彼からは、聴覚優位の線優位性タイプのアスペルガーに近いものを感じる。


■相方が先輩に失礼芸人

番組の冒頭ではおさらいとして、ナダルが先輩に失礼なことを言う、という前回の場面が放送された。
また番組の中盤でも、相方のコロチキ西野から「先輩のネタを見て上から目線で批評する」と指摘されていた。

アスペルガー持ちの人間は、相手が先輩であろうが大事なお客さん相手であろうが空気を読まずにズケズケ言う。アスペルガーにとっては黒いものは黒いし白いものは白い。どんなに偉い人相手でもそれは変わらないので、感じた事実を淡々と述べるのみだ。

良く言えば「相手によって態度を変えたりしない裏表のない性格」と言えるかもしれない。だが、大抵の人は顔なじみや常連になるとそれなりのサービスというか、心遣いを期待するので、アスペルガーのこうした特性は非常に嫌がられることが多い。


ナダルはその後、現場にいる先輩芸人のオーラの大きさを測りだし、タレントの河北麻友子に対しては「芸人ではないから」との理由を長々と語り、オーラはゼロだと手で示した。

アスペルガーは何事にも自分なりの基準を用いて生活している。それは時に社会のルールよりも重視されることがある。
おれの場合は物の置き場所、ストック数、マグカップに入れる飲み物の量、料理の手順などに非常にこだわりが強い。この「こだわりが強い」というのも人から指摘されて、または理解してもらえないのだからそうなのだろう、と思っているだけで、本人の気持ちとしては「いや、これが当然のあるべき形だろう」と思っている。

こうしたアスペルガーの特性と、ナダルの他人への評価の仕方はよく似ている。


■漏らしたのに「絶対に漏らしていない」と言い張る

エピソードトークで、ナダルがシャワー中に大を漏らしたというものがあった。

「ある時シャワーを浴びていてもよおしてしまった。我慢ができないので、その場で出すことにして自分の手で受けた」というものだ。
大の大人が大を漏らすという、もはや笑いに昇華するしかするしかない話だ。

一般的に言えばトイレ以外の場所で出したのだから、これは漏らしたことになる。だが、ナダルは頑なに「漏らしてはいない、きちんと手で受けた」と言い張る。解説すればするほど客席の女子は引いて悲鳴を上げる。それを見たナダルはショックを受ける。
周りから見れば、「なんで素直に認めないんだよ、プライド高いなあ」と笑ってしまう状況なんだろう。

でもおれはそこで、ナダルの言いたいことが手に取るように解ってしまった。
ナダルの心情を解説するとこういうことになる。
  • シャワー中に催した
  • 我慢することは不可能だ
  • この場で出すしかない
  • 素早く頭の中で計画を立てる
  • 「漏らすというのは、我慢しているのに自分の意識とは関わりなく出ちゃうこと」
  • 「自分で狙ったとこに意識して出すのは漏らすということにはならない」と定義付けが完了(ナダル談「自分でしようと思って。漏らすのは絶対嫌だから」)
  • 床を汚すのは「狙ったとこに出す」とは外れるのでダメ
  • 裸で何も身に着けていないので受けるものは手以外にない
  • それを行動に移す
  • 自分の立てた計画通りに事が進み、想定内に収まったので無事にミッションコンプリート
  • 想定通りに事が済んだので前述の「漏らす定義」には当てはまらない
  • ゆえに自分は漏らしてはいない
  • 急な便意という土壇場にも関わらず無事に漏らさなかった自分はよく頑張った、と褒められるはずだ
  • 「キャ~~(客席の女子の悲鳴)」
  • 「どうして悲鳴が…!?褒められる場面だろ?」とショックを受ける
彼の中ではきちんと筋道の立った考えなのだ。なのにどうして誰も理解してくれないのだろうと不思議で仕方なかったのだと思う。


■初対面の先輩に家賃を尋ねる

ジャルジャル後藤「初めて喋った時、『初めまして、ナダルです』の時に、あいさつ終わりの一個目の(ナダルの)質問が『後藤さんって、家賃いくらのとこ住んでます?』って聞いてきたんですよ」
ナダル「(「それが何か?」とでも言いたげなきょとんとした顔)」
お客さん「え~」
ナダル「(お客さんの反応で失敗したと気づいて驚く、客席を見回す)」
ケンドーコバヤシ「相当踏み込んだ質問ですよね」
ナダル「あ、そうですか?」


会場は笑いに包まれる。ナダルはなぜ笑われているのか理解できない。
その後ナダルは「一度大阪であいさつしているから初対面ではない、一回ご飯に行った」と主張する。先輩に軽々しく家賃を聞いたことを追求されているのに、ナダルの中では違う理屈が成立している。

ここでナダルの中では「初対面で家賃を尋ねたからダメなのだ、初対面でなければいい、だから二度目に会った時は家賃を聞いてもよいのだ」という論理が成り立っている。

しかしナダルの主張そのものは勘違いだった。大阪であいさつしたのはジャルジャル福徳のほうで、後藤ではなかった。そこでナダルは言い放つ。
「福徳さんに聞いたらよかった」

福徳に家賃を聞くのであれば、「初対面ではないので聞いても良い」なのだ。
こんなのアスペ当事者のおれでも笑う。それくらいおもしろくてトンチンカンな受け答えだ。でも、これが笑いになるのはお笑いの番組で、ナダルの周りを「おもしろくするプロ」が固めていて、全力で「おもしろい」の方向に振ってくれているからだ。

また、「ジャルジャルにあいさつした」ということは覚えていても、そのうちのどちらにあいさつしたかをナダルは覚えられない。
聴覚優位なので言語情報としては「あいさつした」という事実を覚えているが、視覚情報が弱いタイプなので顔を識別できないのである。もしかすると、モノトーンを好むというところから色弱傾向もあるのかもしれない。色の区別が弱いと立体感が判別できないので、顔つきが覚えられなくなるのだ。


■アスペルガーの日常は福笑い

アスペルガーの典型的な行動として、思ったことをそのまま言動に出してしまう、というものがある。そして本人が自分をアスペルガーだと気づいていない場合は、その言動が空気を乱したと気づいた時点からつじつま合わせが始まる。

そのつじつま合わせは、さながら目隠しして作り上げた福笑いのようにとんでもないものになる。周りから見れば「なんだそれ(笑)」とおもしろくて仕方のないものが出来上がってしまうのだ。
アスペルガーの日常は、常にこうした「目隠し福笑い状態」で成り立っている。


もし上記のナダルのエピソードと周囲のツッコミが一般の職場での会話だったらどうだろう。考えるだけで恐ろしいが、アスペルガーの立場からすると揚げ足取りの吊し上げに他ならない。
おれ自身は、それを学校の朝礼や帰りの会やクラス会や職場での上司との個人面談や先輩からの叱責などで何度も味わった。

当然そうした場では「おもしろい」に振れることはなく、ひたすらおれ自身がどうしても認識できない「欠点」や「ダメなところ」や「ひどいことを言った」ということを繰り返し繰り返し聞かされることになる。そうして、「悪いことを何もしていない(どこが相手の気に触ったのかがわからない)」のに謝罪と反省を求められるのだった。
自分の気持ちとしては何度振り返ってみても反省点はないので、謝罪と反省の言葉も場当たり的な、どこか上の空のものになる。そうしてより一層相手の怒りに油を注ぐことになるのだった。

アスペルガーの当事者にとっては、こうした「謝罪と反省の会」は何を言っても叱られ罰せられるという「恐怖の魔女狩り裁判」にしか思えないものだった。逃げ道はない。
相手の立場からすると、口も態度も悪いくせにしらばっくれるたちの悪いクソガキにしか思えなかったのだろう。

そして、もしこれをおもしろいと笑いに持っていってくれる人がいれば、それはそのまま番組でのナダルの態度と一致する。


■ミスをミスであると気づかずに場当たり的な反省

おれと同じように、上記場面のあとにナダルの場当たり的な反省の場面が出てくる。

ケンドーコバヤシ「あ、だから(初対面で尋ねたわけではなく)2回目やと思った?いきなりじゃなくて?」
ナダル「(わかってくれた!)はい」
ケンドーコバヤシ「2回目でも早いよ」

(会場笑)

ナダル「その…ミスばっかりです僕は。ミスばっかり。ただ、同じミスを繰り返さないってことだけは絶対に決めてます!」
雨上がり宮迫「同じミスがあるから、今2回目ここに来てんねん」

(会場爆笑)


上記のナダルの心理を簡単に解説すると、こうなる。

「どうやら初対面の先輩には家賃を聞いてはいけないことらしい。知らなかった。そうかと思えば2回目でもダメなようだ。その件について叱られているようだが、もう何がなんだかさっぱり判らない。叱られているのは確かだから、なんとか反省している態度を取らなくてはいけない。でも何がいけなくて叱られているかは判らないから全面的に反省しているというところを見せよう」
で、ああなってしまう。

だから、もしナダルがおれと同じ考え方をしているとすれば、今後もナダルは同期の芸人や後輩には平気で家賃を聞くだろう。
それは、「聞いてはいけないと言われたのは先輩に対してだけで、同期や後輩に聞いてはいけないと言われたわけではないから」という理屈になっているからだ。


■先輩のネタをパクってR-1に出場

「おれピンネタないからなあ」などと言いながらR-1に出場することになったナダル。3回戦で披露したネタは、大先輩の土肥ポン太の丸パクリだった。
ナダルが言うには、指摘されるまでパクったということにまったく気づいておらず、知らないうちに真似したということらしい。

アスペルガー症候群の発達障害持ちの中には、特定分野の記憶に優れていることがある。視覚情報を写真を撮るように記憶したり、1時間以上の長い会話を一語一句間違えずに覚えていられたりする人もいる。

おれの場合は聴覚情報に強かった。聴いたメロディーをギターで弾くとか、一度会っただけの人の口調を真似するとか、昔の話をいつまでも覚えていて矛盾点を指摘するとか、そういう役に立たないものばかりだけど。

ナダルはそれが誰のネタなのかは覚えておらず、ネタの内容だけをしっかりと記憶していた。
聴覚優位で、なおかつ視覚情報が弱いタイプのアスペルガーにはこういう人もいる。「誰の話だかは忘れたけど、話の内容はしっかり覚えている」というタイプ。
顔という視覚情報と耳から入った言語情報をうまく一致させられないのだ。


■お母さんに「全部台本だよ」と告げた

ナダルは前回の番組内容について、母親との電話で話したという。
お母さんから「見てられへんかった」と言われ、「全部自分は知ってて台本通りに喋ってるだけだ」と告げたそうだ。
番組ではウケていたけど、おれはこの場面を見て胸が苦しくなった。

現状や扱いを見る限り、ナダルはアスペルガーという扱いは受けておらず、家族や仕事仲間などの周りの人々もそうは思っていないようだ。でもお母さんはきっと、ナダルが子供の頃に数限りなく学校や教師、同級生の保護者から叱責を受けたはずだ。

「この子は意地悪なことばかり言います」「叱っても反省せずに言い訳します」「お宅の子にウチの子がひどいことを言われたんですよ」

そうした場面をナダルも当事者として見ただろう。自分はちっとも悪いことはしていないのだけど、叱られてお母さんが謝らなくちゃいけなくなる。なぜそうなるのかは判らないけど、お母さんに頭を下げさせるのは申し訳なく感じる。もうお母さんを悲しませたくない。次はそうならないように気をつけよう。

だが、やってしまう。そして繰り返される。お母さんは育て方が悪かったのか、何が悪かったのか、なぜこの子はみんなと仲良くできないのかと自問自答を繰り返す。

人の気持ちが判らないアスペのおれがここまで言うのは、それがそのままおれの実体験だからだ。
それを受けてのお母さんの「見てられへんかった」。いや、これはナダルにとってはキツかっただろう。

ナダル「それはでも、それは、これはナシにして下さいよ、だって、それを母親が知ったらどうなります?…立ち直れないでしょ」


ナダルの落ち込んだ様子に周りは「名演技」と爆笑の渦!でもおれは、この場面はとても笑えなかった。いや、ほんとはちょっと笑った。
ここまでキツい内容ですら理解を得られないのなら、もはや笑って流すしかないもんね。


■後輩にお金を使わない

後輩のミキの亜生(あせい)「高級な居酒屋さんとか僕あんまり連れて行ってもらったことない…」
ナダル「(とぼけた顔で)高級なとこ行きたかった?…あ、うん、行く?うん」

(会場笑)


おれに照らし合わせて考えると、アスペルガーは「具体的な求め」に対応することはできるけども、「相手の気持ちを察して欲しがっているものをあげる」ということはできない。
だからおごってあげるとか、後輩と遊びに行くような場面では加減ができない。相手が満足していると思えれば何度でも安いところに連れていくし、逆に相手が引くくらい高額なところでバンバン遊ばせたりすることもある。
そうして「いやもういいです、心苦しいです」などと言われる。こちらとしては、楽しく遊んでいるだけなのになんでだろう?という気持ちになったりするのだ。

もしおれに「たまにはちょっといいところで遊びたい」と思っている後輩がいるとすれば、一言「たまには高いとこ連れてってくださいよ」と言えばいい。おそらく普通の先輩にそういうことを言うのは失礼ということになるのだろうが、アスペルガーはまったく気にしない。「そうか、それなら行こうか」と言うだけだ。なんなら具体的に行きたい店まで相手に決めてもらったほうがありがたい。

ここで今まで通りの安い店で、定型発達の人が後輩という立場から、あまり楽しめないような場面でも気を使って楽しんでいる振りする、ということがあるかもしれない。
アスペルガーとの付き合い方として、これは悪手だ。アスペルガーは本当に気に入ってくれたと思って同じようなところに繰り返し連れて行くので、同伴者のストレスばかり溜まることになる。

こういう時は遠慮なく「○○に行きたいです」と言ってもらわないとアスペルガーには理解できない。遠回しに「たまには他のとこいきません?」ではダメ。他の似たような安いところになってしまう。

声のトーンなども全然伝わらない。「ありがとうございますぅ↓」で遠回しに楽しめなかったと表現しても、アスペルガーからすると「お礼言ってるから楽しんでくれたんだな」以外の意味は持たない。


■総ツッコミを食らって「熱がある」

コロチキ ナダルは途中から、トンチンカンな言動を繰り返すことの言い訳に「実は熱がある」と言い出す。そして計ってみると、実際に37.6℃の熱が出ていた。

アスペルガーも、これに似たパニック症状を示すことがある。
アスペルガーは自分の予定にないこと、思ってもない想定外の事態が発生すると体調に変調をきたすことがある。周りから見ると、「さっきまで元気だったのになんでだよ」ということになるので理解を得られることは少ない。

おれ自身の経験から言うと、仕事で一年でもっとも忙しく、その中で一番重要な役目を任されてめちゃくちゃに張り切って出勤した直後に40℃を超える高熱を出したことがある。
どうにもならずに震えるばかりで病院送りとなり、そのまま一週間寝込んだ。

今回の番組は、四方八方からナダルの一挙一動に突っ込むという内容だった。もしおれがあそこにいたとしたら、アスペルガーにとっては想定外の事態しか起こらない恐ろしい状況だ。これは、常に事前に予定を立てて脳内シミュレーションを終わらせないと何も行動できないアスペルガーにとっては非常にストレスを感じる。
そうして実際にナダルと同じくらい発熱することもあるが、会社員なら「それくらいの微熱、エナジードリンク飲んで気合で治せ」と叱責を受けることもあるかもしれない。

番組のエピソードでは、ナダルの相方のコロチキ西野の熱を計ってみると、ナダルより高い37.7℃。またしてもナダルは同情を得られることはないというオチがついたのだった。ちゃんちゃん。


■聴覚優位型アスペルガーの考え方

自分が発達障害を抱えているとは思っていないから、周囲に合わせようとする。それは、アスペルガーがアスペルガーなりに少しでも周りに溶け込もうとする必死の努力だ。

しかしその努力が実ることは、決してない。手のない人がキャッチボールできないように、足のない人がサッカーできないように、生まれつき目の見えない人が絵を描けないように、アスペルガーには空気を読むアンテナというものが備わっていない。

「自分をアスペルガーだと認識していない聴覚優位型アスペルガー(言葉で考えるタイプ)」は、自分の考えが伝わらなかった時に「自分の論理が破錠しているからだ」と考える。他人から見れば、空気を読まない言動が場に一致しないから飲み込めないということなのだろう。
アスペルガーはそこで、「論理が破錠しているから伝わらない、ならば一分の隙もない論理を作り上げよう」と考えるようになる。その結果、「屁理屈ばっかこねる変な奴」と認識される。

アスペルガーには空気を読むアンテナはないのだが、「自分の予定」にはこだわる人が多い。常に事前にシミュレーションを行い、それに沿った行動をし、出てきた結果が自分の想定通りになることを喜ぶ。

これを日常会話に当てはめるとこうなる。
  1. 「おもしろい話」を起承転結させておく(事前のシミュレーション)
  2. それを実際の会話で披露する(それに沿った行動)
  3. 事前にシミュレーションした「おもしろくなるべき場面」でウケて一段落
で、この話を聞いた相手がアスペルガーの想定通りにおもしろがってくれれば何の問題もない。アスペルガーの予定通りに事は進んでミッションコンプリート!である。
問題は、その話がウケなかった時だ。

話がおもしろい人というのは、相手の反応を見ながら臨機応変に流れをコントロールできる人だ。ウケなかったら、より詳しく説明を加えたり、エピソードを追加したり、別の話にすり替えたりしてその場が盛り上がるように作り変えていく。アスペルガーはこうしたことが決定的にできない。苦手だ、というのではなく、「できない」。顔色を読むということがまるでダメなのだ。

だから、エピソードのオチに入る前の部分でウケた、などということもアスペルガーには受け入れられない。自分の想定したこととは違うからだ。
本来会話やエピソードトークは聞いた相手が楽しめばいいので、会話のどの部分がウケたかは関係ないはずだ。「ウケた」ということは相手が喜んでくれたのであって、そこをトークした側もいっしょに楽しめばいいはずのことだ。

だが、そういう場合にはアスペルガーは説明を始めてしまう。「いや、そこはおもしろいところじゃないんだ。一番おもしろいのはこのあとで…」。アスペルガーの中では事前にシミュレーションした「おもしろくなるべき場面」が決定事項として刻みつけられており、それを他人が勝手に他の場面をおもしろがることは許されない。
こうなると相手は興醒めである。

仕事での評価も同じだ。自分の中で「評価されるべきポイント」が決定事項となっており、それを評価されないということは許容できない。そして、他人がその他のポイントを評価する、ということもどうしても受け入れられないのだ。

プライドが高く、自分の想定とは違ういじられかたを非常に嫌うナダルは、こうしたアスペルガーの特性とそっくりだ。

しかしナダルの場合は幸運だった。「おもしろかった時点でひとネタ終わり」「いつまで喋んねん!」、で強引に次に進めてくれる先輩芸人やスタッフがいてくれた。一般社会の日常会話でこれが出た場合はそこまで強く突っ込んでくれる人はいない。
ナダルはウケたという事実だけを見てもらえて、まるまる一番組で取り上げてもらうことができた。


■ナダルを笑うのは悪いことか?

今回の『アメトーーク! コロチキ・ナダルSP』を観て、自分とナダルの思考の組み立て方が非常に似ていると感じた。
冒頭の「お断り」でも書いたように、おれは専門家でも何でもない。だから彼をアスペルガーだと決めつけることはできない。ただ、「おれととても近い考え方をしているな」と思うのみだ。

そしておれもナダルがこうしていじられているのを観て笑うけども、笑ったあとにほんの少し後ろめたさを感じる。それは手のない障害者にボールを投げて「お前こんなのも捕れないのかよww」とからかうのと違いはないように思えるからだ。

でも、「いじられた当事者が被害感情を抱いておらず、なおかつ本人も楽しんでメリットを享受している、ということが確実なのであれば」という但し書きはつくけれども、それはきっと悪いことではないと思う。
特にナダルは「芸人」として笑いを生むことを職業にしている人だ。いじられることで居場所ができて、キャラが立ち、周知され、笑いを生むことができる。
「いじり」と「いじめ」は違う。

ナダルのこうした点を司会である雨上がり決死隊の宮迫は「プライドが高すぎるためにいじられるのを本気で嫌がる」と評していた。
それはそれでいいじゃないか。ただでさえ理解者はいない上に誤解もされやすい。病気や障害の一種として腫れ物に触るように扱われるよりは、「プライド高いキャラ」として生きていくほうがずっと需要があるだろう。

松本ハウスのハウス加賀谷という芸人がいる。彼は幼い頃より統合失調症を患っており、その病気を公表して以来NHK以外のテレビの仕事はなくなってしまった。Twitterでは主に舞台や障害関係の施設や公演を回っている様子が伺える。

芸人としてテレビに出なくなることが下である、ということはないが、タレントとして、テレビが華やかな舞台であることにもまた変わりはないだろうと思う。そういう意味において、ナダルがキャラ付けされていじられているのはある種の成功例のように感じるのだ。

そんなナダルを見て、おれは本当によかったなと思う。自分の特性をおもしろいと捉えてくれる人がいて、笑いに変えてくれる人たちに支えられていて、それを仕事として収入を得られるということは、おそらく変わり者として一般社会で生きていくよりは恵まれた暮らしができるだろう。
だからおれは今後もナダルを観て笑う。彼は今まで通りの「プライド高い芸人」としてこれからも笑われ続けていけばいい。


アスペルガーのおもしろおかしいトンチンカンな日常をもっと詳しく知りたい、という奇特な人は、下記コラムが楽しめるはずだ。
●奥村隆「息子と僕のアスペルガールガー物語」【第1回】時間に細かすぎる親子(奥村 隆) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

この親子は数字へのこだわりが強く、筆者自身は大学でも数字の好きな仲間に恵まれたそうだ。




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テーマ : アスペルガー症候群・自閉症スペクトラム
ジャンル : 心と身体

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No title

初めまして。
アスペルガー当事者から見たナダルさんの思考過程、とても興味深く読ませていただきました。
私が非アスペルガーの立場から分析していた内容よりも更に細かく、なるほど思考の筋道が違うとはこういう事なのかと実感しました。
また、最後の『ナダルを笑うのは悪いことか?』についても納得です。
周りの人が笑いに変えてくれるのは、一般社会で変人として生きるよりは幸福。確かにそうかも知れませんね。
お母さんのくだりだけは私もナダルさん親子の気持ちを考えて胸が苦しくなりましたが、アスペルガー当事者としてではなく芸人として生きるなら、こういう形がベストでしょう。

Re: No title

らんさん、こんにちは。
こんなに長いエントリーを読んでくださったとのことで、ありがとうございます。

発達障害に対しては、差別や偏見は良くないとの論旨で語られがちですが、実際に定型発達(発達障害ではない人)と違う部分があるのは事実なんですよね。
そうした点を実感していただけたのだとしたら、書いたかいがありました。
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プロフィール

兼業農家ツベル

Author:兼業農家ツベル
PC(パソコン)ときどきゲーム。ニュースも少々。

平成28年熊本地震に被災しました。今は元気です。

最近自分がアスペルガー症候群(AS)の特性が強いことがわかりました。

更新通知用:@tbrcln

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