読書 - シャンタラム

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
新潮社 (2011-10-28)
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シャンタラム〈中〉 (新潮文庫)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
新潮社 (2011-10-28)
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シャンタラム〈下〉 (新潮文庫)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
新潮社 (2011-10-28)
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 反逆心と、魅力的な女と、未知の土地での冒険がこれでもかと詰まった小説。他にどんな説明がいるだろうか。
 …と、これで終わらせるのはあまりにそっけない。ごく、ごく簡単なあらすじを。

 生まれ育った国で武装強盗の罪により投獄された主人公は、そこを脱獄し、未知の国インドに降り立った。そこで出会った”ビッグ・スマイル”の”プラバカル”と意気投合する。
 主人公はある事件により、有り金をすべて失う。逃亡犯である主人公には助けてもらうあてもない。プラバカルは言う。
 「とても、とても、とても深刻なトラブルです。インドでは金がないということは笑えないことです」

 もうこれ以上は語れない。これでも語り過ぎたかもしれない。それくらい情報のない状態で読みたい本なのだ。 プラバカルの言い方を真似れば、「とても、とても、とてもおもしろい物語です。これを読まずに『読書が好き』なんて笑えないことです」ってところか。
 ただし、長い。すごく、すごく、すごく長い。上中下の三部作で、上巻が700頁、中巻が622頁、下巻が549頁もあるのだ。しかしそんな思いも読み始めるまでの話。一度手に取ってしまえば、それこそ寝る間を惜しんで読み進んでしまう。「長い、長い」が「足りない、足りない」「終わるな、終わるな」になっていく。
 驚くのは、この練りに練ったような冒険活劇は、著者の体験を元に書かれたものらしいということだ。新潮社の著者来歴から引用すると、以下のように記してある。

グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ
Roberts,Gregory David

1952年、豪メルボルン生れ。十代から無政府主義運動に身を投じるも、家庭の破綻を機にヘロイン中毒に。1977年、カネ欲しさに武装強盗を働き、服役中の1980年に重警備刑務所から脱走。1982年、ボンベイに渡り、スラム住民のために無資格・無料診療所を開設。その後、ボンベイ・マフィアと行動を共にし、アフガン・ゲリラにも従軍。タレント事務所設立、ロックバンド結成、旅行代理店経営、薬物密輸の後に再逮捕され、残された刑期を務め上げる。2003年に『シャンタラム』を発表し、現在もインドの貧困層を支援するチャリティ活動に奮闘中。
グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ|新潮社


 事実は小説よりも奇なりという言葉があったが、まさにそれを地で行くような人生じゃないか。それをただ語ってもらうだけでも間違いなくおもしろいだろうに、そこに一癖や二癖では足りないほどの個性的な人物が次々に出てくる。それに、文面の端々に現れる著者のインドへの愛情。人々の暮らしぶり。文化や風習。とあるしぐさをしてみせるだけでインドの人たちがどれだけ喜ぶのかということ。人生には自分の意志や信念だけではどうにもならないこともあるということ。

 田口 俊樹氏の翻訳がいい。海外の小説を読むと、いかにも翻訳しましたよという文が続いて多少冷めたりもするが、田口氏の訳は自然で、下品な罵り合いも実際に見てきたような、情景の浮かぶ描写だった。この翻訳がなかったら、本書の魅力も結構な部分が損なわれていたんじゃないだろうか。

 後半になるにつれ多少間延びする印象があることも否めない。前半の、何が出てくるかわからないサーカスに紛れ込んだようなドタバタ劇とは打って変わって、暗く重たい思想と現実の谷間に落ちていく。時にあまりに高尚な言い回しについていけないと感じることもあったが、インドで暮らすとそういう考え方になるのかもしれない。
 出会いと別れ。友情と裏切り。尊敬と軽蔑。愛と無関心。すべてを味わった主人公を包むインドの人たちの温かさ。それは、著者のインドへの思い入れの表れなんだろう。

 ジョニー・デップがプロデューサーを務める同タイトルの映画もようやくクランクインにこぎつげそうだという。楽しみな限り。


 こんな物語を読んだらインドを好きにならざるを得ない。ゲッツ板谷氏の“インド怪人紀行”を読んで中和しておこう。
 シャンタラムとは真逆の“外から見た”インドの嫌らしい面をバカバカしいギャグとともにたっぷり味わえる。
インド怪人紀行 (角川文庫)
ゲッツ板谷
角川書店
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No title

これ図書館で借りてぜんぶ読みました。

たしかなんかのブログだかメルマガだかで超弩級にめちゃくちゃ面白いみたいな紹介をされててそれで読んだんですけど、私はそこまで言うほどまでは面白いとは思わなかったんですよね。けっして面白くなかったわけではないですけど。先入観がよくなかったのかもしれません。

どこまでが事実でどこからが脚色なのかわかりませんが、すごい小説ですよね。それは作品がすごいのか、人生がすごいのかわかりませんけど。

作中の好きなキャラアンケートならアヘン窟のスタンディングババに一票。

>engawaさん

ハードル上げすぎちゃったのかもしれませんね。
それを考えると、紹介する時にはおもしろいということを強調して期待感をあおらないほうがいいということですね。
大変参考になりました。

まずは小説として楽しんで、次に著者来歴を知ってあれは事実かこれは創作かと2度楽しめました。

どいつもこいつも違う魅力があるので、わたしは決められませんw
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