あいさつのこと

おれは、元気にあいさつするこどもだった。
小学校2年生のある日までは、道ゆくひとの誰にでも、おおきな声で元気よくあいさつしていた。

登校時には、おはようございまぁす!
下校時には、こんにちわぁ!

知らない人にも、率先してあいさつしていた。
そんなある日。

登校時に、むこうからお婆さんが歩いてくる。
もちろん、元気よくいつもの通りにあいさつした。

「おはようございまぁす!」

その時の老婆の顔は忘れられない。
老婆は何の興味もない目で、年上の青年から半殺しにされ頭を踏みつけられているジャイロを見る父親のような目で一瞥すると、そのまま通り過ぎて行ったのだった。

何か自分は悪いことをしたのだろうか。なぜあいさつしてもらえなかったのだろうか。
他の大人たちは、みんな笑顔であいさつを返してくれた。
なぜ、あいさつしてもらえなかったのだろう。

その思いはヤワなハートに深く、深く突き刺さり、いつまでも残った。
そののち、あいさつをしようとするたびにその思いが蘇り、あいさつできなくなってしまったのだった。


都会と言われる街で暮らす友人が、ある時語ったことがある。
「都会の人って、ぶつかっても謝らないんだよ」
人がものすごく多いから、歩いていて肩がぶつかることもある。それで、こちらがすいません、と謝っても、みんなシカトして行っちゃうんだよ。だから、こっちも自然と謝らなくなるよね。


昨日の夕方、家の前に打ち水をしていると、通りがかった若い男性があいさつしてきた。
「こんにちは」
それに対し、おれはあいさつを返すことができなかった。ほんの少し、頭を下げただけだった。

おれの中では、すっかりあいさつは当たり前のことではなくなっていたのだ。
あいさつされたらあいさつを返す。いや、会った人にはあいさつする。そういうことは、非日常のものとなってしまっているのだろう。それどころか、あいさつをしてくる人間はなにか売りつけようとしているのではないか、訪問販売やセールスマンなのではないか、などと考える始末。

いやな大人になったものだ。


誰にでもあいさつをする女がいた。職場まで自転車で通っていて、道で出会う人みんなに笑顔であいさつする女だった。
近所のおじさんおばさんはもちろん、道路工事のおじちゃんやコンビニの店員、ゲームセンターでたまたま隣り合わせた人など、とにかく誰にでもだ。
そんな彼女は、もちろんみんなから好かれていた。


今でも時々、下校時の小学生からあいさつされることがある。もちろんあいさつされていい気分にもなるのだが、それより先にびっくりしてしまう。
あいさつされて、びっくりしていることにびっくりだ。

いやな大人になったものだ。
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