安川惡斗vs世IV虎戦を振り返り、世志琥復帰に関して思うこと

始めに書いておくと、筆者はプロレスファンではない。格闘技に興味がなくもないが、プロレスの会場に観に行ったこともないし、テレビで試合を観ることもほぼない。
にも関わらず世IV虎改め世志琥の情報を追いかけるのは、彼女に対する世論に理不尽さ、腑に落ちないものを感じるからだ。

“凄惨マッチ”の背景と試合の流れに触れたエントリーは以下。

関連エントリー
●野良黒 世IV虎のこと

■世IV虎改め世志琥と安川惡斗の裏話

●高原秀和(@takaharahdkz)さん | Twitter
2月11日辺りからけっこうなボリュームで世IV虎改め世志琥と安川惡斗の裏話が語られている。高原秀和氏は安川惡斗主演の映画『がむしゃら』の監督。
高原氏他、関係者数名のツイートが以下にまとめられている。

●世志琥(世IV虎)復帰に対する様々な見解 - Togetterまとめ

高原氏は安川と関係の深い人物なので、安川に寄った発言になるのは当然だろう。
これらは当事者の主観になってしまうので、額面通りに受け取ることはできない。それぞれの立場で発言し合っているので平行線だろうし、第三者からは真偽の判断のしようがない。
しかし、以下の発言は別だ。

互いに納得ずくの街の喧嘩であっても、あれだけの大怪我を負わせたら傷害になる。成人であれば慰謝料なども含め社会的責任を伴う。リングの上だからといってうやむやにされてるが、そういうことだ。やったやられたとか、強い弱いの問題じゃない。誰もそういうことを教えないのか。

実は当事者ではなく、善意の第三者によって傷害として訴えられていた。そうならないように惡斗は示談書にサインをした。それで訴えられずにすんでいる。


もしこれを法に触れる事案だと考えるなら、怪我をした後に訴えるのではなく、犯罪行為とみなされる事案が行われた時点で通報されてしかるべきだ。勝った試合ではアクションを起こさず、負けて怪我した時だけ訴えるなどというアンフェアなことはまさか言いますまい。
考えてみて欲しい。プロレスのゴングがなった直後に「殴り合いが起きてます、リング上でレスラー同士が殴ったり蹴ったりしてるんです」と通報するような人がいれば、これは頭のおかしい人である。通報した側が警察への業務妨害で叱られても不思議ではない。
あの試合を法に照らし合わせるとは、そういうことだ。

示談書にサインした安川の判断は至極当然と言える。
もしこれを「安川が訴えなかったから犯罪者にならずに済んだんだぞ。感謝しろよ」という意味でツイートしたのなら、高原氏の感覚がズレているとしか言えない。


■プロレスの試合中の事故ということ

もし世IV虎と安川惡斗の ”凄惨マッチ” が幼稚園で起きた子供同士のケンカだったら高原氏の言い分も通るかもしれない。だが、これはプロレスの業務中にリング上で起きた事故であり、この場合はそうとは言えなさそうだ。
プロレスの試合中に起きた事故を調べてみた。

●プロレスラーの死亡事故と試合中の大怪我などの事件の一覧 - いちらん屋(一覧屋)
こちらによると、2016年現在ではプロレス中の死亡事故は4件。練習中の死亡事故が7件。日本人選手の大怪我は19件。
プロレスの歴史を考えると少ない印象を受ける。

●リング禍 - Wikipedia
こちらは死亡例が主で重症の事例はおまけ程度。こちらによると、日本人プロレスラーのリング禍 (試合中に起きた死亡事故) は5件。上述のサイトではフリーの選手が除外されているのかもしれない。日本国外のレスラーのリング禍は8件。
ボクシングのリング禍にも触れてあり、こちらは非常に事故件数が多い。600件を優に超えている。頭部へ打撃が集中し、なおかつノックアウトを狙うという競技の性格から他の格闘技とは比べ物にならないほど危険なスポーツだということがわかる。

これらはあくまで業務中に、仕事として行われた試合中の双方の合意のもとの事故なので、加害者や被害者という扱いはされないし、罪にも問われない。


■事故に立ち会った選手はどう見られているのか?

「選手が怪我をした」というのと「選手が亡くなった」のどちらが重い事故かは言うまでもない。では、重い事故に関わった選手はどういう風に見られているのか。

●同期の死を乗り越えて…尾崎魔弓<5> : ライフ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
1997年8月15日の「プラム麻里子・コマンド・ボリショイVS尾崎魔弓・天野理恵子」戦で、尾崎選手のライガーボムを受けたプラム選手が意識不明となり亡くなっている。それを尾崎選手が振り返ったインタビュー。
当たり前のことだが、尾崎選手が加害者扱いされることはないし、批難されてもいない。

●俺の居場所はここしかねえんだよ/柴田勝頼【俺達のプロレスラーDX】|ジャスト日本のプロレス考察日誌
2000年4月14日に行われた福田雅一選手と柴田勝頼選手の試合にて、柴田選手のエルボーを受けた福田選手が意識不明となり亡くなっている。
言うまでもないが試合中の事故であり、どちらが悪いという話にはなっていない。

●故・三沢光晴さん七回忌「6月13日を忘れない」斎藤彰俊 | 週刊!プロレスの感想書くブログ
●三沢光晴最後の一日「6月13日を忘れない」を偲ぶ | 週刊!プロレスの感想書くブログ
2009年6月13日に行われた「三沢光晴・潮崎豪 VS バイソン・スミス&齋藤彰俊」の試合で、齋藤選手のバックドロップを受けた三沢選手が意識不明および心肺停止となり亡くなっている。それを雑誌の企画で齋藤選手が振り返ったインタビューを読んだファンの方がブログにしたもの。
齋藤選手への批難や否定的な見解は感じられない。どちらかと言えば、不幸な事故が起きた試合を真正面から振り返った齋藤選手は勇気がある、という語り口。関係者によると、齋藤選手のバックドロップはあくまできっかけに過ぎず、三沢選手は以前より体調が思わしくなく、過密なスケジュールにより蓄積したダメージによるものが大きいとのこと。


■プロレスラーが罪を問われる事案はあるか?

では、プロレスラーが業務上罪を問われる事案はあるのだろうか。
調べた限りでは、試合中に起きた事故について罪に問われた事例はなかった。練習中に起きた事故については以下のような事例がある。

●プロレスラー事故死、ついに佐野直、菅原伊織ら、プロレスラー3名を業務上過失致死で書類送検へ | 極上の“T-1二見激情”見参 | スポーツナビ+
●【格闘技裏通信】会社員レスラー死亡事故 不起訴に遺族が申し立て - スポーツ - ZAKZAK
●新人プロレスラー 由利大輔さん 悲劇の事故死を追求する会: 02.由利大輔さん死亡事故の経緯
リンク先のエントリーは、時系列で並べると下から上に読む形。
●新人レスラー死亡事故に評論家が苦言「プロとして最低限の技術を」。 - ライブドアニュース
上記はどれも同じ事件。新人レスラーの由利大輔選手が「ダブル・インパクト」という大技の練習をさせられて頭から落ち、亡くなったという事件。この事件では、受身の技術がきちんと身についていなかった由利選手にきちんとした指導をせず、強引に危険な技をかけた疑いがあったようだ。
技をかけた菅原伊織と佐野直の両選手は書類送検されるも刑事告訴では不起訴。民事訴訟では和解となった。ご遺族の希望により詳細は不明。

●ダブル・インパクト プロレス - Google 画像検索
ダブル・インパクトの画像検索。受け方を知らずに食らったらそりゃ死ぬだろうと思わせられる大技なのがわかる。


●セッド・ジニアス - Wikipedia
プロレスについて語るエントリーではあまり扱いたくない事例だが、取り上げないのもフェアではないので。罪に問われるというのとは少し違うかもしれないが、裁判で刑法第35条の正当行為に反する落ち度と認められた事例として。
こちらでは「事前の打ち合わせから大きく逸脱する攻撃は取り決めに反する行為であり、プロレスでは事前の打ち合わせに反する攻撃は許されない」として裁判で賠償金を減額されている。


●スポーツ法政策研究会 第二東京弁護士会-スポーツメディスン誌掲載情報

 スポーツの特質、たとえばボクシングは、相手の身体を攻撃することを内容とする、もともと怪我をさせる可能性が高いスポーツです。これについて、相手方も十分に理解して試合に臨んだのであれば、「その危険を引き受けた」ことになるので、法的責任が認められる可能性は低くなるのです。


弁護士の望月克也氏による「格闘技における事故の責任について」というPDFファイルより。プロレスは上記の範疇に収まると考えてよさそうだ。
このファイルにはプロレスラーの起こした事件も記載してあるが、それは「試合後」に起こった事例なのでプロレスの試合とは関係ない。

●正当行為 - Wikipedia
●刑法第35条 - Wikibooks
望月氏の話は正当行為の説明だと思われる。これは刑法第35条の「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」に該当する。プロレスラーはリングの上で蹴ったり殴ったり投げたりすることが仕事の一環として広く認められているので、相手に怪我をさせても正当な業務行為の上で起きた事故として罪には問われない、ということになっている。


上記事例の通り、練習中に起きた事故であっても明確に罪に問われることはないようだ。
このことからも、世IV虎改め世志琥と安川惡斗との試合において法的に罰せられるような行為はなかったと見ていいだろう。


■ファンの見解

法的に罰せられなかったからといって、何でもやっていいという意味にはならない。では、リング上で怪我をしたり事故が起きることについて、ファンの間ではどう捉えられているのだろう。

ヤフー知恵袋は専門知識が必要な分野では微妙なものが多いが (本当の専門家は忙しいのでこんなところで回答している暇はない)、趣味の分野ではファンの熱い回答があって参考になる。

●プロレスでのガチ技での大怪我事故ってなんがあります? - 馳浩が... - Yahoo!知恵袋

kogakumitukiさん 2012/5/1821:19:52

ノアの斉藤が三沢にバックドロップをやった後動かなくなりその後亡くなった事が発表されましたね。
あれは衝撃でした。
当時斉藤は泣いてしまったらしいです。
勿論斉藤は何も悪くありません。
ファンも当然分かっているしマスコミも分かっていますがカリスマの三沢が亡くなった事は普通にニュースでも取り上げられそのバックドロップの場面は何度も放送しましたね。
その後悪意のある投稿で斉藤が悪者扱いされましたね。

●プロレスの試合では、三沢氏をはじめ、これまでに何人か死者... - Yahoo!知恵袋
「プロレスは技をかけるほうが手加減するものではない、しっかりトレーニングして受ける技術が身についた選手しかリングに上ってはいけない」、という意見が複数。

●プロレス。よしこの件がyahooNEWSで連日取り上げられてます、昔怪我をす... - Yahoo!知恵袋
こちらのベストアンサーは密度が濃く、引用が難しいのでリンク元参照のこと。
要約すると、「プロレスラーなら一定水準以上の実力があってしかるべきで、手も足も出ずに素人から同情されるような試合やるくらいならリングに上がるな」、という感じ。

●twitterのニュース - 女子プロレス"アノ壮絶喧嘩マッチ"の舞台裏|ほぼ週刊吉田豪 - 最新恋愛ニュース一覧 - 楽天WOMAN
記事は4ページ構成で、1,2ページはこのエントリー冒頭でも取り上げた高原氏のツイートの引用。3ページ目から吉田豪氏の見解。
要約すると「怪我しそうな技を魅せるのがプロレスでそれに対応できなければレスラー失格。リング上の事故に外野がケチを付けていたらプロレスが成り立たなくなる」という見解。

●世IV虎(世志琥)復帰|ぼくらのプロレス
こちらは否定派と擁護派が入り混じっている。
否定派は「世IV虎改め世志琥はきちんと筋を通していない」という感じ。擁護派は「きちんとした説明責任はあるにせよ、復帰にも試合内容にも問題はない。止めなかった興行側が悪い」という意見。


●凄惨マッチ安川惡斗vs世IV虎 折れた心の先にある戦い - ラクダのぱんつ
ニュースになってから試合動画を見たというプロレスファン以外の一般人の意見。『世IV虎というやつを殺してしまいたいと思ったほどだ。』『人として許されない。』とまで書いてある。世IV虎もヒール役としてここまで憎まれれば本望だろう。
プロレスのヒール役は、まさに観客にこういう気持ちになってもらうために存在しているのではなかったか。管理人氏もプロレスの醍醐味を存分に味わったことだろう。普段プロレスを見ない人の大多数が同じような意見だったようだ。


■筆者の雑感

プロレスラーという仕事は、殴られたり蹴られたり投げられたりするのが当たり前。他の格闘技ではそれを避けることもできるが、プロレスでは受け止めるのが作法のようなもの。
一般人が真似すると大怪我をする。だが、それを大怪我しないように受けるのがプロレスラーの身につけておくべき重要な業務上のスキルではないだろうか。一般人にできないことをするからこそ興行として成り立っている部分も大きいだろう。

プロレスラーはそういうことを年間何十試合も行う。多い選手だと200試合近くこなすこともあるという。これだけの興行を行うためには、試合に影響のあるような怪我は避けなければならない。試合を休むとファンの期待を裏切ることになるし、現実問題として仕事をキャンセルすることになり信頼を失うことになる。

実力が近いレスラー同士ならああいう試合内容でも盛り上がるかもしれないが、あの両者は誰から見ても実力差は明らかだった。なんたって世IV虎のワンパンチで安川はリングの端までふっ飛ばされるほどだったのだ。そういう意味では、試合を組んだ運営側の責任も大きい。
あの二人の仲が悪かったのは周知の事実だったようだし、安川主演の映画のワンシーンでも、世IV虎改め世志琥は「嫌いです」とはっきり言い切っている。荒れた内容になるのは予想できただろうし、度の超え方が予想以上だったとしても、止める機会は何度もあった。

世IV虎改め世志琥がカメラ目線で「嫌いです」と言い切る予告編。

●これが安川惡斗の生き様だ!映画『がむしゃら』予告編 - YouTube

「女性が殴られ顔が変わるほどの大怪我をした」という部分がクローズアップされて同情を誘った試合だったが、多分にネット民のヤンキー嫌いも含まれている気がする。世IV虎改め世志琥はバックグラウンドもレスラーとしてのキャラ付けもヤンキー丸出し。パッと見の印象はネット民に嫌われるDQNそのもの。

しかしプロレスは幼稚園児のケンカではないし、リングもお砂場ではない。「仲良く遊びましょう」という世界とは違う。格闘技を名乗っている興行の試合中に怪我をしたからといって、それを批難するとプロレス自体が成り立たなくなってしまう。
世IV虎は元々ヒールとして売ってきたレスラーであり、憎まれてなんぼの役。基本的にはこの憎らしい世IV虎と他のベビーフェイスレスラー (ヒールをやっつける役) を戦わせて興行を盛り上げる性質のものだ。

従事する人たちも本来ならその部分を理解しているはずだし、ファンも判っている。だが、普段プロレスとまったく関わりがなく好きでもなんでもない人たちが騒ぎたて、その世界で完結するべき事柄を潰して回るというのには理不尽さを覚える。


両者の所属していたスターダムは、そこを見誤ったのではないか。自分たちで完結させるべきところを、対外的な体面を気にしてまっとうな試合運びをしたはずの世IV虎の王座剥奪や出場停止、試合のノーコンテストなどの処分を課し、「拳の顔面への攻撃の禁止、行った場合は即反則負けでその場でストップ」などという訳のわからないルールの厳罰化を表明した。
怪我をするからといってそれを禁じていては、蹴りも投げ技も凶器攻撃も何もかも禁じることになる。それはすなわち、プロレスの否定にならないか。「安心してください、怪我しないようにやってますよ」は、観客が話す分にはご自由にだろう。舞台裏で選手に言い含めることもできる。だが、興行側が明文化するのは、見せてはいけない部分ではなかったろうか。

文句をつけるだけつけて一円も落とさない、プロレスのこれからに何ら寄与することもない無責任な外野にそこまで気を使う必要はあったのかは疑問だ。謝罪しなければならないのは会場に観に来て応援してくれるファンに対してで、ファンの納得の行く試合を作れなかったことについてではないか。

繰り返して言うが、今回の件はプロレスラーがリングの外で法に触れる事件を起こした訳ではないし、一般人が被害に遭った訳でもない。両者合意のもとで仕事として行われたプロレスラー同士の試合中の事故なのだ。

謝罪会見の詳細は以下。上から会見の要約、出席者のコメント詳細が2ページ続く。
●2/25【スターダム】世IV虎が謝罪会見、スターダム王座剥奪・無期限出場停止処分に、安川惡斗は「網膜…|プロレス格闘技DX
●2/25【スターダム】会見における小川代表、世IV虎、風香GM、高橋、木村の詳細コメント(その1/写…|プロレス格闘技DX
●2/25【スターダム】会見における小川代表、世IV虎、風香GM、高橋、木村の詳細コメント(その2/写…|プロレス格闘技DX

●2月25日、スターダム謝罪会見について。悪役レスラー世Ⅳ虎は謝罪すべきだったのか。 - 男マンの日記
上記の謝罪会見についてのファンの見解。
悪役レスラーである世IV虎に謝罪させることの是非、フリーでありスターダムに所属しているわけでもない木村響子が謝罪会見に同席することへの疑問など。

●世Ⅳ虎復帰表明に里村激怒!シードリングと絶縁も
スターダム社長ロッシー小川とGM風香の発言は、「自分たちのあずかり知らぬところで起きたことで、世IV虎が勝手にやったこと。迷惑かけたのだからウチに話を通すのが筋」とでも言いたげだ。釈明や仁義という言葉も出ている。事故が起きた際に所属選手を守ってやれなかった立場の人間が言うことかと目を疑う。
世IV虎改め世志琥は1993年生まれの22歳。成人とはいえ、一般的にこの年頃の子にきちんとした礼儀や仁義を求めるのは酷だし期待もしないだろう。それが足りないというなら周りの大人が指導することだ。しかしスターダムはそれを放棄した。それどころか責任をすべて負わせ、「ウチとはもう関係ありません」という体にして追い出した。ならば今さらどの口が世IV虎を責められるというのだろうか。

●祝・世Ⅳ虎復帰!改めてあの試合からの流れを振り返る。これから始まる世間との闘い。 - 男マンの日記
上記の復帰表明についてのファンの見解。
凄惨マッチからの一連の流れや背景をざっくりおさらいしてある。


●-安川惡斗-映画『がむしゃら』オフィシャルページ
安川は元々女優をしていた人だった。名前の安川惡斗も女優のアクトレスから来ているという。ドキュメンタリー形式の映画の概要を見る限り、生い立ちも不幸が重なり同情を誘う部分もある。本名の安川結花としては頑張り屋さんなのが伝わってくるし、前向きでとにかく痛々しいほどポジティブだ。冒頭で引用した裏話をツイートした高原氏も、きっとそんな安川を応援する気持ちなんだろう。

しかし、プロレスの世界でレスラーとして活動する以上、弱い部分を見せないで欲しかった。
攻撃という行為は一般人にもできる。ぶん投げたり凶器で殴ることもできる。だが、それらを受けても平気で立ち上がるというのはプロレスラーにしかできないこと。一般人が食らったら死んでもおかしくないような技を受けても大丈夫という強さ。驚きと興奮。それを見せてくれるのがプロレスだと思っていた。

安川は選手としては引退した今でもセコンドとしてリングサイドに立ち、相手に酒を吹きかけたりしているそうだ。
好きなこと、やってて楽しいことというのは誰にでもある。私はこれをやるんだ、という自由はその人の権利で、それについて周りがどうこう言うようなことではない。だがそれでも考えてしまう。安川にはもっと向いている道があるのではないかと。


■ジャガー横田を怪我させた大仁田厚は何も言われない

●ジャガー横田、大仁田厚氏に鼻骨折られる 反則ありの男女混合試合でボコボコに (サンケイスポーツ) - Yahoo!ニュース
●大仁田厚がジャガー横田の鼻を折り大流血!神取忍が女4人のミックスドマッチで男扱い!?YASSHIがブードゥー離脱!
試合の文字起こし。余談だが、神取忍が男性枠として参戦しているのがおもしろい。

●初めての鼻骨骨折…|ジャガー横田ブログ「ジャガジャガジャーン!おもちゃ箱」by Ameba

刺激的で反則あり、何でもO.Kなので机の切れ端で相手を堂々と殴れましたから気分爽快!!(笑)

仕返しのエルボーを顔面に受けまして…尾骨骨折を

お互い様です!(^_-)


レスラーの大怪我は珍しいことでもない。女子プロレスラーのジャガー横田は、つい先日行われた試合で男性レスラーの大仁田厚から鼻の骨を折られている。体格差や実力差こそあれど、同性同士の対戦の世IV虎 vs 安川惡斗戦のほうがよほどフェアに感じる。
一般的に言えば、女性が男性から殴られて鼻の骨を折る大怪我をしたなら洒落にならない事件だ。だがこれは、れっきとした興行の試合で行われたことで、仕事で行われたことで、興行側もファンもみんな理解している。
当人同士も周囲も、怪我については何の批難の声も釈明もない。当たり前だ。こういうことがあるのがプロレスなのだから。

上記のヤフーニュースのコメント欄を読んでみても、女性のジャガー横田に怪我をさせた大仁田厚については全然世論の反応はない。女性同士の殴り合いで怪我させると処分されて一時引退にまで追い込まれるのに、女性の顔面を殴って鼻の骨を折った男性は何も言われないのである。実に不思議なことだ。この差はどこにあるのだろうか。
あの時世IV虎改め世志琥に散々文句をつけた人々は、ジャガーの大怪我を見ても何も思わないのだろうか。世IV虎改め世志琥は、なぜあそこまで責められなければならなかったのだろうか。


この次に出た「新生スターダムBEST2015」にはスターダムを退団した高橋奈七永選手の試合や世IV虎選手vs安川惡斗選手の凄惨マッチがカットされているとのこと。そのため両者の試合が見られる最後のDVDとなっている。
高橋奈七永選手はどこかで見たような…と思ったら、つんくプロデュースの「キッスの世界」の人だったんだね。

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世IV虎がDEEP参戦か

■格闘技

DEEPから世IV虎に格闘技参戦オファー
格闘技か…。一応プロレスも格闘技と分類されるけど、プロレスラーと格闘技選手は違う。プロレスは大きく派手な動きが歓迎されるが、格闘技はその逆。コンパクトで堅実な動きをしないといけない。
両立している才能のある選手もいるが、世IV虎はどうみてもプロレスラー向きの体型。攻撃はすべて受けてなんぼの世界でこそ活きる体つき。重量級として期待されているようだけど、公称 160cm 70kgの世IV虎では少し動きが重たそう。
UFCなどのMMAのトップ選手はみんなしなやかで素早いもんね。

Ronda Rousey - Boss - YouTube
ロンダ・ラウジーは柔道ベースのグラップル型の選手。北京オリンピック柔道70kg級銅メダリスト。柔道で培った投げ技からの腕ひしぎ十字固めが大の得意技だが、近年はパンチや蹴りでのKOも見られるようになった。ギブアップしない相手は躊躇なく折りに行くという根性の座り具合が何より怖い。1987年生まれの28歳。

Holly Holm - "MMA Highlights 2014" - @_HOLLYHOLM #HollyHolm - YouTube
ホーリー・ホルムはキックボクシングベースのストライカー型の選手。蹴り技が多彩で左の回し蹴りが強烈。1981年生まれの34歳だが、年齢をまったく感じさせない。

? Conor McGregor ? Highlights "The Notorious Journey" (Pit MMA) - YouTube
男性のトップ選手も参考までに。コナー・マクレガーはアイルランド出身。アマボクシング国内王者でブラジリアン柔術でも茶帯、フェイントを交えたトリッキーな蹴りも得意というオールラウンダー。非常に引き締まった体だがゴツさはなく、むしろダンサーのような鮮やかな動き。1988年生まれの27歳。

こうやって他の選手を見ていると、今から世IV虎がパンチやキックを繰り出すストライカー型になるのは考えにくい。かといって、ロンダのようにグラップリングを狙うにしても、あの体型では懐に入る前に打撃をもらいそう。

ここまでいろいろ考えてみて、ところで「総合格闘技団体DEEP」ってどんなとこだっけと調べたら、こんなとこだった。
DEEP (格闘技団体) - Wikipedia

プロレスラーも積極的に参戦させ、和田良覚レフェリーの試合を組むなど話題性のあるマッチメイクから「格闘技のおもちゃ箱」とも称されていた。

なーんだ、まじめに考えて損した。

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世IV虎のこと

“凄惨マッチ”で現役引退した世Ⅳ虎が7か月ぶり電撃登場!現役復帰への意思表示か?
安川惡斗との“凄惨マッチ”以来公の場から完全に姿を消していた世IV虎。ずっと去就を心配していた。一般人となってどこかに就職した、程度の噂話しか聞こえてこなかった。

顔面崩壊の美人女子レスラー 対戦相手は悪くなかった ※画像・動画アリ 世IV虎vs安川惡斗 史上まれに見る大惨事 | まにゅそく跡地 -オールジャンル2chまとめブログ-
このサイトの画像が色んな意味でハード。キュートな世IV虎ちゃんのプライベート風フォトも載っている。あと流血と顔面崩壊画像もあるので苦手な人は注意。

こうやって画像を見て話だけ聞くと、どこをどうやっても世IV虎が悪いように思える。だが、背景を知って、試合を入場からきちんと観たら印象が変わった。

ほとんどの試合動画では世IV虎を悪者に仕立てあげたいためか、試合前のいざこざがカットされて20分弱の短縮バージョンになっている。実際にフルの動画だと35分以上ある。
そのカットされているシーンでは、入場後に惡斗が土下座すると見せかけて不意打ちで殴りかかり、惡斗陣営総出で世IV虎ひとりを囲んでボコボコに蹴り倒す、というシーンがある。
で、なぜ惡斗が土下座しようとしたかというと、それに至る因縁があるのだが、長くなるので以下に譲る。

「世IV虎 vs 安川惡斗」の試合の背景と試合の詳細は以下に詳しい。
世IV虎が一方的に悪かったわけじゃない。いや、世IV虎は全然悪くない。 | プロレスファンタジスタン | スポーツナビ+

この流れをさせておいて、ヤンキー上がりの21歳の若い子に「キレるなよ」は、それは無理というものだ。

惡斗は見ていて危なっかしかった。良くも悪くも“プロレス”として演じきって欲しかった。親戚の子供のお遊戯会を観ているようなハラハラ感ばかりがつのり、安心して観ていられない。失敗しませんように…という気持ちになった。結果大失敗したわけだが。

試合開始から睨み合う両者。世IV虎は一歩も動かない。惡斗はゆらゆらと左右にうろつきながら近づいていく。
両者の距離が射程に入って睨み合いとなる。世IV虎の口が動く。煽り文句か。ここで惡斗が殴りかかる。顎の下か、胸のあたりか。殴り合いが始まり、世IV虎の2発目のパンチで惡斗はロープ際までよろける。力の差は歴然。
世IV虎の追撃。髪を掴み殴る、引き倒して殴る、脇固めで殴る。惡斗はまったく対抗できない。すでに試合になっていない。ここで惡斗の鼻は折れたようだ。
ここまで開始2分だが、観ているほうは誰もが力の差を感じる試合内容。結果論だが、ここで止めるべきだった。

この流血でレフェリーから「パンチは危ないパンチは危ない (パンチはやめろパンチはやめろ、かもしれない。小さな声なのでよく聞き取れず)」と警告があり、世IV虎は冷静になった。それからはきちんとプロレスをしようとしていた。だが、その後も突っかかって拳の殴り合いを挑む惡斗。 レフェリーは「パンチ危ないパンチ危ない」と繰り返し注意を与えるが、惡斗はまったく聞き入れず世IV虎の顔面を狙って殴りつける。

それでも世IV虎は冷静だった。惡斗から鼻のど真ん中をパンチで殴られても、必要以上のダメージを与えないように拳ではなく掌底、手のひらで叩き返していた。この時点で惡斗は何もできない。殴り返された途端、顔を両手で覆ってじっと耐えるのみ。力の差がありすぎる。誰が見てもわかる。

惡斗の蹴りから揉み合いになり、世IV虎が組み伏せる形に。
世IV虎はその後もきちんとプロレスの形に持って行こうとしていた。ロープに振り、ヒールとして蹴りつけ、投げ倒し、得意技の顔面ウォッシュを繰りだそうとする。だが、コーナーに追い詰められた惡斗はロープをぐっと握りしめたまま中腰で“プロレス”を拒否。ただ睨み合うだけの膠着状態になる。

それでも殴り合いにこだわる惡斗は、またも世IV虎に殴りかかる。仕方なく世IV虎も拳で応戦。そのまま馬乗りからの顔面殴打。ここで顔面崩壊。
直後にレフェリーが間に入りブレイク。惡斗はリング外にエスケープ。顔が腫れ上がり崩れた様子を見たレフェリーが「危ねぇな」とつぶやく。それでもリングに上がろうとする惡斗を見て、セコンドにタオルを投げるように指示。惡斗側セコンドがタオルを投げ込み試合終了。

試合終了直後、惡斗側セコンドの木村響子が世IV虎に掴みかかり、髪を掴んで揺さぶる。そこで惡斗が「プロレスやれ、このクソチャンピオン」と怒鳴り散らして終了。

振り返ってみても、プロレスをしなかったのは惡斗ではないだろうか。きちんとプロレスの形にできていれば、鼻血程度は流れても、あれほどの大怪我にはならなかったのではないか。
同じリングに立つ以上、“受けきる”能力は必須だろう。ましてや素人の喧嘩ではなく、お互いプロの選手なのだ。リング上では自分の身は自分で守らなければならない。それができないなら自ら殴り合いなど挑んではいけない。

以上のような事情があるから、世IV虎を批難する気にはなれない。せっかくヒールとして順調に育っていくはずだったのに、妙な野良犬に絡まれてプロレス人生台無しになっちゃったな、と同情してしまう。

他に世IV虎ちゃん情報としては、大島優子の大ファンで、大島優子のグラビアに自分の顔を貼り付けてセルフアイコラを作り上げるくらいの熱狂ぶり。得意料理は焼きそば。

世IV虎が年頭決戦に!3月にも復帰/ファイト/デイリースポーツ online
妙な記事。団体側からの発表ではなく、サイト側が勝手に「3月7日のシードリング後楽園ホール大会で1年1カ月ぶりの復活ファイトが見られそうだ』などと発表している。リークってこと?

安川 世IV虎の現役復帰に条件付きで理解/ファイト/デイリースポーツ online
どちらかというと、惡斗にどうしてきちんとプロレスしなかったのかと訊きたい。あんなひどい試合にしておいて、被害者面で「世IV虎さん、待ってるよ」などと言われたら、世IV虎は立つ瀬がないのではないか。
それでも世論としては、理由はどうあれこれだけ大怪我したほうは被害者として、絶対善として徹底的に擁護され、世IV虎は加害者として批難を浴びるんだろう。

世IV虎一人が悪者になっている構図が不愉快だし、彼女にのみ責任を取らせて追い出した団体へも腹が立つ。
試合を作るのはリングに立つ選手だけではないはず。それなのに、試合が壊れたら当事者の選手だけがすべてを被らなくてはいけないのか?

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